トピックス(8)皮膚と花粉症
花粉症は日本の国民病ともいえるほど、患者さんが多くいます。特に、春先になりスギ花粉が飛ぶようになると、鼻や目の症状のみならず、顔や頸部の皮膚が荒れることがあります。どうして肌荒れが起きるのでしょうか。
スギ花粉による皮膚炎 2つのタイプ1)
スギ花粉が顔や頸部の皮膚に接触し、痒みを伴う肌荒れ(皮膚病変)が現れるものを「スギ花粉皮膚炎」といいます。病型(タイプ)は2つに分類されます。
1つはアトピー性皮膚炎が基礎疾患としてあり、スギ花粉が増悪因子として働くタイプで、アトピー性皮膚炎の30%程度の患者さんがスギ花粉により皮膚症状が悪化するという報告があります。
もう1つは、アトピー性皮膚炎がないのに肌荒れを起こすタイプで、春先だけに発症し、顔や目の周囲などの露出部や、頸部などの摩擦が生じやすい部位に起きます。若い女性に多いという特徴もあります。
スギ花粉皮膚炎のケア2)
対策としては、第2世代の抗ヒスタミン薬を用いるなど花粉症の治療を行います。炎症が強い場合には、ステロイド外用剤(作用の強さを示すランクはmedium程度まで)もしくはアトピー性皮膚炎の治療薬であるタクロリムス外用剤を使用します。
また、皮膚のバリア機能が壊れると、スギ花粉の抗体が皮膚に入り込み、免疫機能が働いてアレルギーを引き起こしてしまうことがあります(経皮感作といいます)。過度の洗浄や化粧、シャンプーなどは控え、保湿剤などのスキンケアにより角層のバリア機能を保つことも重要です。
花粉に接触しないための予防策2,3)
スギ花粉に限らず、花粉が付着しやすいのは頭と顔です。外出時にはスギをはじめとした花粉にできるだけ接触しないよう、マスクやマフラーなどで皮膚を覆い、外出後はシャワーなどで顔や頸部、頭を洗い花粉を洗い流します。下着や洋服は、表面がなめらかな生地にすると花粉が付きにくくなります。また、洗濯後は花粉が付着しないように家の中で干しましょう。
【参考文献】
1) 横関博雄, 大岩真由子:治療学 2007, 41(1), 65-68
2) 横関博雄:アレルギー・免疫 2013, 20(6), 862-871
3) 厚生労働省:平成22年度花粉症対策 花粉症Q&A集(平成22年度). https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/kafun/ippan-qa.html