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トピックス(9)脂漏性皮膚炎

皮脂の分泌が多くなった状態を脂漏(しろう)といいます。脂漏性皮膚炎とはどのような病気なのでしょうか。


脂漏性皮膚炎とは1,2)
脂漏性皮膚炎では皮脂の分泌が盛んな部位(脂漏部位)、皮膚がこすれて摩擦を受ける部位などに、ふけのようなカサカサ(鱗屑;りんせつ)を伴った赤いまだら状の湿疹が生じます。湿疹ができやすい部位としては、顔のTゾーン(額から眉間、鼻、あご)や小鼻の脇、耳(外耳道と耳裏)、頭皮、前胸、脇の下、背中などです。
かゆみはないことが多く、あっても軽微です。乳児期に発症して自然治癒する乳児型と、思春期以降に発症して慢性の経過をたどる成人型があります。


脂漏性皮膚炎の原因2-5)
皮脂のなかに含まれる中性脂肪が皮膚の常在菌(マラセチア属真菌)によって分解されます。そして、分解されてできた脂肪酸が皮膚に刺激を与え、炎症が生じると考えられています。環境などによる皮脂の成分や分泌の変化、ビタミンB2、B6代謝などの要因も関係するとされています。
なお、このマラセチア属真菌はアトピー性皮膚炎(AD)の原因、増悪因子だとする指摘もありますが、ADの病態と真菌の関連性は不明な点も多く、ADには抗真菌薬は慎重に用いられます。


治療とセルフケア2)
鱗屑を伴う脂漏性皮膚炎はマラセチア属真菌の増殖が悪化要因であることが多いので、治療には抗真菌薬の外用、抗真菌薬を含んだシャンプーなどを用います。 セルフケアとしては、石けんやシャンプーを用いた適切な洗顔、洗髪を行うことにより脂漏部位を清潔に保ちます。また、生活リズムを整えることも大切です。


【参考文献】
1) 安田利顕著, 漆畑修改訂:美容のヒフ科学 改訂10版, 2021, p.165, 南山堂, 東京
2) 清水宏:新しい皮膚科学 第3版, 2018, pp.124-125, 中山書店, 東京
3) 田嶋磨美:真菌誌 2005, 46(3), 163-167
4) 杉田隆ほか:Med. Mycol. J. 2013, 54(1), 39-44
5) 日本皮膚科学会ほか:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018 日皮会誌 2018, 128(12), 2431-2502

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